発達障害(神経発達症)が知られるようになってきたのは、ごく最近のことです。発達障害のお子さんとの関わり方や、具体的な支援について悩んでいる方は、まだまだ多くいらっしゃいます。
「発達障害の判断基準とは?」
「発達障害の診断ができるのは何歳から?」
「発達障害の診断にかかる費用や診断されたあとの対応は?」
本記事では、発達障害の診断に関する上記の疑問について、詳しく解説していきます。
放課後デイサービスに興味のある方や、申し込みをご検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
発達障害とは
はじめに、「発達障害」は、WHOによる疾病国際分類の新定義(2022年1月発行)により「神経発達症」という名称が公式に使われるようになってきています。本記事では、旧名称の「発達障害」として解説していきます。
発達障害とは、脳の器質的損傷・変形による先天性の障害です。個人の発達の特定領域で、異常な発達パターンを示します。その特性は、発達障害の下位障害や個人によっても大きく異なります。たとえば「注意力」や「社会的な相互作用」「言語の発達」「認知機能」などが挙げられます。
主な発達障害としては、ASD(自閉症スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが有名です。
発達障害は、個人が日常生活や社会的な環境で困難を抱えることがありますが、適切な支援や早期介入によって、生活を改善できる場合もあります。
関連記事:発達障害の種類と症状とは?子どもといかに向き合うか
大人の発達障害と二次障害
もともと「発達障害」は、お子さんへの精神分析で発見・確立された障害です。その後、同特性が大人にも認められることがわかり「大人の発達障害」という言葉が聞かれるようになりました。
お子さんの発達障害もそうですが、大人の発達障害の場合は、社会的なつながりが太いことから、より二次的な障害が関与しやすい特徴があります。
たとえば、社会的な適応困難があるためにうつ病や双極性障害が発現する場合や、コミュニケーションの困難が原因で人間関係のトラブルで不安障害が発現するケースなどが挙げられます。
また、注意力や自己組織化の問題によって仕事や学業の遂行に困難が生じ、過剰なストレスが引き起こされることもあるでしょう。
発達障害にはさまざまな二次障害が関与するため、適切な支援が重要です。
発達障害の判断基準
ここからは、発達障害の判断基準について以下の2つに分けて解説していきます。
- 発達障害の診断方法
- 診断のポイント
それぞれご覧ください。
発達障害の診断方法
発達障害の診断には、問診と心理検査が一般的に使用されます。問診とは、本人やご家族との面談を通じて、発達に関する情報や日常生活の困難、行動の特徴などを詳しく聞き取ることです。
また、心理検査では認知機能や社会的な適応能力、コミュニケーション能力などを評価するための専門的なテストが行われます。
これらの情報を総合して、専門家が診断結果を出すことになります。
診断は個々の特徴に基づいた客観的な評価であり、適切な支援や治療の手段を見つけるうえで重要なステップです。
診断のポイント
多くの精神障害に共通していることではありますが、発達障害の診断の必要条件は、以下の3つとされています。
- 先天性
- 恒久性
- 困り感
それぞれ解説していきます。
先天性
先天性とは、生まれつきの要因や遺伝的な要素を指します。発達障害は遺伝的な傾向が強いと考えられており、生後の環境による特性ではないことが診断のひとつの基準です。
また、実際に生まれつきであることの証明は難しいため、たとえば注意欠陥多動性障害(ADHD)では「12歳までに同年齢の人と比べて顕著に特性が現れる」と、具体的な年齢が定められています。
恒久性
恒久性とは、特性が一貫して異なる場面や状況において見られることを指します。つまり、特定の状況や環境に限らず、さまざまな場面で発達障害の特徴が見られるということです。
この恒久性が確認されることで、一時的な問題や環境要因だけによるものではないことが示されます。
困り感
「困り感」とは、臨床心理学において「障害や疾患の特性・病態が、日常生活や社会的な活動など、実生活に支障をきたしていることや状態、またその支障をきたしている際の感覚」を意味する専門用語です。
たとえば、学校での学習や集団活動、社会的な人間関係の構築や維持などに問題が生じている場合、困り感が存在すると考えられます。
この困り感の確認も、発達障害の診断において必要不可欠であり、これをもとに支援や適切な対応策の提供にもつなげていきます。
ICD-10とDSM-5の違い
ICD-10とDSM-5は、精神疾患の診断基準を定めたものであり、異なる目的とアプローチを持っています。ICD-10は国際的な基準であり、幅広い疾患を包括的に取り扱っています。
発行元は世界保健機関(WHO)です。
一方、DSM-5はアメリカ精神医学会によって開発された基準であり、主に精神疾患や精神障害の診断に使用されています。
また、DSM-5は症状に基づくアプローチに特化しており、より詳細な症状の定義や基準を提供している点も特徴です。
どちらの基準も役割と利用範囲が異なるため、診断時には適切な基準を選択する必要があります。
発達障害の診断ができるのは何歳から?
医師によって意見は異なるものの、一般的に発達障害の診断は3歳頃から可能とされています。しかし、その時点での診断は確定診断ではなく、あくまで予備的なものであり、発達検査の結果に基づいて行われます。
実際の確定診断には、長期にわたる観察や症状の変遷を考慮する必要があり、さらに医師の経験やスキルも求められます。
また、発達検査自体は0歳から可能なものもありますが、確定診断に至るには診断基準を満たす症状の持続性や重篤性を評価する必要があります。
発達障害の診断方法
ここからは、発達障害の診断方法をご紹介します。
基本的には、以下の2つを実施して、複合的な判断を元に診断へ至ります。
- 問診
- 生理学的検査、心理検査
それぞれ内容を解説していきます。
問診
問診は、発達障害の診断において重要な手法のひとつです。医師は本人やご家族に対して質問し、症状や発達経過、行動パターンなどを詳しく聞き取ります。
また、問診は継続的に行われることがあり、症状の変化や発達の進捗を把握するためにも重要です。
医師の経験や適切な質問の選択が問診の効果を高めます。
生理学的検査、心理検査
生理学的検査と心理検査は、発達障害の診断において役立つ手法です。生理学的検査では、脳波を測定するなど医療機器を使用して身体の機能や神経活動を評価します。
とはいえ、発達障害に使用する生理学的検査を取り入れる病院はまだまだ少ないのが現状です。
一方、心理検査では、認知能力や言語能力、社会的スキルなどの心理的な要素を測定します。
これらの検査結果は、発達の特徴や問題領域を明確にするうえで重要で、基本的には問診と心理検査を複合的に行って診断へ至るのが一般的です。
ただし、正確な結果を得るためには、検査の適切な選択と実施が求められます。
発達障害の診断を受けられる場所
そもそも診断行為は、医師しか行えません。そうなると、発達障害の診断を受けられる場所はおのずと医療機関になるでしょう。
精神科や心療内科は診断の専門家として知られており、多くの場所で発達障害の診断を行っています。
また、小児科でも診断が可能な場合がありますが、地域によっては設備や専門知識の点で限られることもあります。
そのため、診断を受ける場合は、まずは身近な病院で相談し、適切な専門家や診療科を紹介してもらうことが重要です。
医療機関の専門家が適切な診断を行い、適切なサポートや治療方法を提案してくれます。
発達障害の診断にかかる費用
発達障害の診断にかかる費用は、診察自体は2,000〜3,000円ほどですが、診断へ至る前の心理検査には5,000〜1万円ほどの費用がかかることがあります。
また、診断書を書いてもらうためには別途5000円ほどが必要です。これらの費用は目安であり、場所や専門医の違いによって異なる場合もあります。
費用については、事前に医療機関に確認することが重要です。
また、一部の医療費助成制度や保険の適用もありえるので、相談してみることもおすすめです。
発達障害と診断されたあとの対応
ここからは、発達障害と診断されたあとの対応を見ていきましょう。
基本的には、特性の発言具合や困り感によって以下の3つのいずれか、あるいは複数がとられます。
- 環境調整
- 精神療法
- 薬物療法
それぞれ確認してください。
環境調整
発達障害の対応の一環として、環境調整が重要です。
これは、発達障害を持つ人にとって快適で支援的な環境を整えることを指します。
たとえば、騒音や刺激の少ない空間を提供したり、ルーティンや予測可能なスケジュールを設定したりすることなど。
また、情報の整理や視覚的な支援を提供することも助けになります。
環境調整は個々のニーズに合わせて行われるため、支援者や関係者との密なコミュニケーションが必要です。
発達障害の人がストレスを軽減し、能力を最大限に発揮できるような環境を整えることが目指されます。
精神療法
発達障害の対応策としては、精神療法も重要です。
これは、心理的な問題や困難に取り組むための支援です。
具体的な手法としては、認知行動療法やソーシャルスキルトレーニングなどが一般的。
精神療法は個別セッションやグループセッションとして行われ、個々の課題や目標に応じてカスタマイズされます。
精神療法は、自己理解や自己管理能力の向上、感情の調整方法の学習などを促進し、心の健康と社会的な適応力の向上をサポートする役割を担っています。
薬物療法
発達障害の対応策として、薬物療法が考慮されることもあります。
これは、特定の発達障害の症状を軽減するため、薬物を使用する治療法です。
たとえば、注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合、多動性や衝動性を抑えるための薬が利用されることがあります。
ただし、薬物療法は個々の状況に合わせて適切な薬剤と投与量を選定する必要があります。
また、副作用や効果の個人差なども考慮しなければなりません。
医師との相談のもと、適切な薬物療法の選択と管理が行われます。
発達障害の診断書はどんなときに使う?
そもそも、発達障害の診断書は、診断を受けても自動的にもらえるものではありません。
診断書は申告制であり、必要な場合には使用用途を伝えて医師に書いてもらう必要があります。
ただし、診断書の発行には別途診断書費用がかかることもあります。
一般的には、先述したように5,000円ほど。
診断書は特定の手続きや支援を受けるために必要な場合があるため、医師と相談しながら適切な手続きを進めることが重要です。
ここからは、発達障害の診断書はどんなときに使うのかを解説していきます。
基本的には、以下の2パターンが挙げられます。
- 支援をうけたいとき
- 休職を検討するとき
それぞれ解説していきます。
支援をうけたいとき
発達障害の診断書を使うひとつの方法は「支援を受けたいとき」です。たとえば、学校や職場で特別な支援を必要とする場合、診断書は役立ちます。
診断書を提出することで、個別の配慮やサポートを受けられるでしょう。また、学校では特別な教育プランや支援クラスの提供もあります。
職場では、適切な配慮や調整が行われ、仕事の遂行がしやすくなるかもしれません。
しかし、診断書は必ずしも支援の保証ではないため、具体的な支援内容や手続きについては該当する機関や組織に相談することが重要です。
休職を検討するとき
発達障害の診断書を使うひとつの方法は「休職を検討するとき」です。発達障害による困難や負担が生じている場合、休職を取ることで身体的・精神的な回復を図りたいときも出てくるでしょう。
診断書は、その際の休職の理由や期間を支持するために役立てられます。診断書を提出することで、労働者の権利が保護され、休職の申請が円滑に進むことが期待できます。
ただし、具体的な休職手続きや条件は労働法や雇用契約によって異なる場合があるため、雇用主や労働組合と相談しながら適切な手続きを進めることが重要です。
発達障害の診断を受けるメリット
発達障害の診断を受けるメリットはいくつかあります。
まず、正確な診断によって、自己理解が深まり、自己肯定感が高まることがあります。
また、診断結果をもとに、適切な支援や治療を福祉として受けられるのもひとつです。
学校や職場においては、特別な配慮が得られる場合もあります。
さらに、ご家族や友人との関係性が改善し、サポートの範囲が広がることも考えられるでしょう。
診断を受けることで、自分の個性や困難の理解が進み、より良い生活を築く手助けになりえます。
発達障害の診断を受けるデメリット
発達障害の診断を受けるデメリットも考慮する必要があります。
ひとつのデメリットは「ラベリング効果」です。
診断されることで、自己のアイデンティティや将来への不安が生じることがあります。
また、社会的な偏見や差別を受ける可能性もあります。
診断を受ける際には個人の状況やニーズを考慮し、メリットとデメリットをバランスよく検討することが重要です。
発達障害の判断基準は先天性と恒久性と困り感
発達障害の判断基準について解説してきました。
発達障害の診断には、先天性と恒久性と困り感の3つが重要です。
先天性は、障害が生まれつき存在していることを指します。
恒久性は、障害特性が長期間、いかなる場面でも認められることを示します。
困り感は、日常生活や社会的な関係において機能的な困難があるかどうかを評価します。
これらの基準を満たす場合に、初めて発達障害の診断の可能性が出てくるわけです。
診断には多角的な視点と評価が必要であり、医師の判断に基づいて行われます。
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