保育士として働いている方で、「キャリアチェンジしたい」「保育士の資格を活かした他の仕事に興味がある」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、保育士の資格が活かせる12の職業と、保育とはまったく異なる業界の5つの職業を紹介していきます。あわせて、保育園を円満退職するコツもお伝えします。
保育士からの転職で異業種は難しい?
保育士の仕事は専門性が高く、一見すると異業種への転職はハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、保育士の業務は多岐にわたり、実は多くのスキルを持っています。
ここでは、保育士の主な業務内容を確認してみましょう。
- 子どものお世話
- 保護者や業者の対応
- プリントの作成
- イベントの企画
- 急なケガや病気の対応
保育士として培ったコミュニケーション力や企画力、洞察力、体力などのスキルは、転職活動においてアピールできる要素がたくさんあります。したがって、異業種への転職はそれほど難しくはないでしょう。
保育士から転職で違う職種を考えてしまう理由
東京都が実施した東京都が行った調査によると、「今の職場をやめたい」と考えている保育士のうち、約60%が給料の低さを理由に挙げています。また、仕事量が多さや労働時間の長さ、職場の人間関係といった労働環境への不満も、違う職種への転職を考えるきっかけとなっているようです(参照:東京都保育士実態調査 結果の概要)。
一度「この仕事を辞めたい」と思ってしまうと、バイアスがかかり、保育士の仕事自体がいやになってしまいます。転職を考えるときは、保育士の仕事がいやなのか、それとも今の労働環境を変えたいだけなのかを明確にしてから転職活動に取り組むことが大切です。
保育士から異業種へ転職するメリット・デメリット
続いては、保育士から異業種へ転職する場合のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
保育士から異業種へ転職するメリット
保育士から異業種への転職は以下のようなメリットが挙げられます。
- 収入アップが見込める
- 人間関係がリセットされる
- ワークライフバランスがとりやすい
- 新しいスキルを獲得できる
- キャリアアップできる
- 勤務時間が安定する
保育士の仕事は給料が安いわりに仕事量が多く、それが原因で拘束時間が長くなるなど、保育の仕事自体がストレスになっているケースがあります。そのため、まったく違う環境に身を置くことはリフレッシュになるでしょう。
また、新しい環境でスキルを身につけることで、自身のキャリア形成に選択肢が増えるなど多くのメリットがあります。
保育士から異業種へ転職するデメリット
一方、保育士から異業種への転職は、以下のようなデメリットが挙げられます。
- 保育士の専門知識が活かせる場所が少ない
- 新人としてスタート
- 新しい人間関係の構築
異業種への転職は、中途採用でも新人扱いです。そのため、待遇面も新卒と同じ扱いだったり、試用期間は非正規だったりと、希望する待遇が得られないこともあります。新しい人間関係もうまくいくとは限りません。
このように、異業種への転職では保育士のころの悩みが解消されないリスクがあることを覚えておきましょう。
保育士の資格を活かせるおすすめの職場
保育士は保育園だけでなくさまざまな施設で必要とされているため、転職の選択肢としての候補は多いでしょう。
具体的にどのような場所で求められているのか見ていきましょう。
他の保育園
今の職場は辞めたいけど、保育士の仕事は辞めたくないという場合、今よりも労働環境のいい他の保育園で働くとよいでしょう。例えば株式会社が運営する保育園は、企業として従業員である保育士の給与や働き方などの改善に積極的に取り組んでいる可能性があるのでおすすめです。
- 認可保育園
- 認可外保育園
- 企業内保育園
- 託児所
認可保育園
認可外保育員には公立の保育園と私立の保育園があります。公立の保育園で働くには公務員の資格が必要ですが、地方公務員の退職手当制度により退職金が保証されていることもあり、転職先として人気です。私立の認可保育園で働く場合、公務員の資格は必要ありませんが、国や自治体から補助金が出るため、運営は安定しています。
認可外保育園
認可外保育園は、国や自治体からの補助金が出ないため、保育環境や労働環境が良くないと思われがちです。しかし認可保育園と比べて、利用者のニーズに寄り添った保育ができるため、あえて認可外保育園を希望する人も多くいます。例えば幼稚園のように教育に力を入れていたり、夜間の保育が可能だったり認可保育園よりも、保育の目的がはっきりしているのが特徴です。
企業内保育園
企業内保育園は保育園不足で復帰できない従業員のために、企業主体で運営する保育園のことです。企業の勤務時間が保育時間になるため、早出や残業は比較的少ないでしょう。主に企業内に併設されているため、急な病気やけがのときに保護者となかなか連絡が取れないなどの心配がありません。
また、同じ企業で働いているということもあり、保護者間のトラブルやクレームが少ないため、比較的働きやすい環境と言えるでしょう。
託児所
託児所は一時的に子どもを預かる施設です。運動会や発表会、お誕生会などの年間行事がないため、保育園よりも作業負担は少ないでしょう。プリントの作成や連絡帳の記入などの事務的な作業もないため、余裕をもって保育できる環境とも言えます。
児童福祉施設
児童福祉施設とは、障がいをもつ子どもや事情があって家庭での保育が難しい子どもを支援するための施設です。保育士からの転職では児童福祉施設で施設保育士として働く選択肢もあります。
施設保育士として働くためには、保育士の資格のほかに「児童指導員任用資格」の資格が必要です。この資格を持つ人が施設保育士として施設に採用されると、児童指導員として働けるようになります。
保育士が児童指導員任用資格を取得すれば以下の施設が転職先の候補として挙げられるでしょう。
- 乳児院
- 児童養護施設
- 重症心身障害児施設
- 肢体不自由児施設
- 母子生活支援施設
- 知的障害児通所施設
- 放課後等デイサービス
- 児童館
乳児院
乳児院は何かしらの事情で家庭での養育が難しい原則1歳未満の子どもを預かり親に代わって育てる施設です。保育士1人につき、1人~2人の子どもを担当します。保育園のように1日にうち数時間というわけでなく24時間体制となるので、勤務は夜勤を含めたシフト制になるでしょう。
不規則な生活になるほか、子どもの心のケアや保護者への対応もあるため、保育園で保育士と比べると、過酷な環境になるかもしれません。しかしシフトや夜勤に対しては手当が支給されるため、やりがいを感じられるお仕事です。
児童養護施設
児童養護施設は、親がいない子どもや、金銭的な問題や虐待などが原因で家庭で育てられない子どもに安定した生活環境を提供する施設です。乳児院と同様24時間体制ですが、大きく異なるのは子どもたちが幼稚園や学校に行くことです。そのため、保育士というより子どもたちの保護者としての役割が大きいでしょう。
業務は、生活全般のサポートをはじめ、幼稚園や学校の行事への参加やメンタルのケア、将来へ向けた自立の準備と退所後のアフターケアなど多岐にわたります。保育士の資格を活かしつつ、まったく異なる働き方ができるため転職先として候補になり得るでしょう。
重症心身障害児施設
重症心身障害児施設とは、知能や身体に重い障がいのある子どもための施設です。通所型と入所型の2つのタイプに分けられます。
主な仕事は食事や排泄の介助や、コミュニケーションのトレーニングやレクリエーションなので、保育士としての経験を存分に活かせるでしょう。しかし、7歳未満が通う保育園とは違い、重症心身障害児施設は18歳未満の幅広い年齢層の子供を対象としています。身体の大きな子どもの介助をすることもあり、体力や筋力が必要です。
肢体不自由児施設
肢体不自由児施設とは上肢、下肢、体感に障がいがあり、日常の立つ・座る・歩く・持つなどが難しい子どもが入所している施設です。医療型障害児入所施設・福祉型障害児入所施設・医療型自動発達支援センターと3つあり、さまざまな専門家が自立に向けてサポートしています。
この3つの施設において保育士の役割は日常生活の介助やレクリエーションの企画立案などです。しかし、障害の度合いは一人ひとり異なるため、それぞれの個性に合った活動計画を立てなければなりません。そのため、障害に対する基本的な知識が求められます。
母子生活支援施設
母子生活支援施設は、離婚やDV、虐待などのさまざまな事情を持つ母親とその子どもを支援する施設です。安定した生活環境を提供し、行政と連携し自立に向けたサポートをおこないます。
保育士からの転職では、施設での保育士としてや、母子支援員としての活躍が期待されるでしょう。母子生活支援施設では、特に配偶者の暴力が原因で入所した母子が多いため、精神的なケアも必要です。
児童発達支援施設
児童発達支援施設とは障害児通所施設の一つで、発達支援が必要な0歳~5歳の未就学児が通う施設で一般的には療育園とも呼ばれています。児童発達支援施設での保育士の役割は、その子どもの特性にあった方法で、就学に向けた生活支援や集団生活が送れるよう指導することです。また、子供の将来に悩む保護者のサポートもおこないます。
児童発達支援施設は地域の中核となる大型の「児童発達支援センター」と小規模で地域に住む子どもが通いやすい「児童発達支援事業所」があります。利用者は年々増えているため、保育士の需要も高まるでしょう。
関連記事:児童発達支援とは?サービスや費用、申請の流れを解説
放課後等デイサービス
障害者通所施設のもう一つが、放課後等デイサービスです。この施設には6歳から18歳までの支援を必要としている子どもが、放課後や夏休みなどの長期休暇に利用します。主に、自立に向けて生活支援や社会への適応力を養うことが目的です。
保育園から転職する場合、指導する子どもの年齢が上がるため、体力やこれまでとは違った知識も必要になるでしょう。そのため、専門性を高めてキャリアアップを目指す保育士におすすめです。
児童館
児童館は18歳未満の子どもが利用できる、自治体や社会福祉法人が運営する施設です。放課後や夏休みなどの長期休暇に児童へ遊びの場を提供しており、多くの保育士が活躍しています。仕事内容は子どもの見守りや施設の安全・衛生管理、イベントの企画などです。事務作業はありますが保育園のように持ち帰りの仕事が多くないため、プライベートの時間もしっかり確保できるでしょう。
自治体が運営する児童館で正規職員として働く場合は保育士資格のほかに公務員資格も必要になります。
保育士以外の仕事
保育士の収入や業務内容など、将来を見据えたときに不安を覚えるのであれば、異業種への転職もおすすめです。保育士からの転職では以下の業種で活躍が期待できるでしょう。
- 受付・一般事務
- 営業
- 接客業
- 介護職
- IT関連
保育士の仕事で身につけたスキルは、どんな業種にも強みとしてアピールできますよ。
受付・一般事務
受付業務や一般事務は体力の衰えや勤務時間の長さがネックで、転職を考えている保育士におすすめです。デスクワーク中心で走ったり重いものを運んだりすることがないため、体力面では楽になるでしょう。勤務時間も一般的な企業では9時~17時が多く、保育士と比べるとプライベートな時間が増える可能性が高いです。受付業務や電話対応では保護者対応で培ったコミュニケーション力が活かせます。
また、保育士のように仕事を持ち帰ることが少ないため、オンとオフをしっかり切り替えられます。
営業
営業は、収入面が不満で保育士からの転職を考えている人におすすめの業種です。
営業職の給与は基本給とインセンティブ(成果型報酬)で構成されている企業が多いため、頑張れば頑張った分だけ年収アップが期待できます。また保育士としてのスキルも営業職では役立ちます。
例えば、顧客のニーズを引き出すヒアリング力や、問い合わせやクレームなどへの対応力は、保護者と信頼関係を築くためのやり取りの中で、自然と身についているでしょう。
接客業
接客業の基本は笑顔です。保育士という仕事上、毎日笑顔で子どもと接してきたことでしょう。自然な笑顔が身についている保育士は、接客業に向いています。
また接客業といっても、飲食業、販売業、アミューズメント業など自分に合った職種を選べます。アミューズメント施設のスタッフやおもちゃ販売などは子どもと接する機会が多いため、保育士の経験があれば採用されやすいでしょう。
介護職
高齢者の身の回りをサポートする介護職は、人のお世話をするという部分は保育士と同じです。
もちろんお世話の目的は違いますが、気持ちを汲み取る洞察力や危険を回避するためのリスクマネジメント力は介護の現場でも役に立つでしょう。
また、介護士の資格を持っていない場合でも「認知症介護基礎研修」を受講すれば介護助手として働けるため、転職のハードルとしては低いと言えます。しかし、入所者に対してできることが限られていることから、場合によっては保育士時代よりも収入が下がる可能性があります。そのため、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を取得し、介護助手ではなく介護士としてキャリアを始めるのはおすすめです。
IT関連
IT関連というと、一見保育士とは無縁そうですが、ICT(情報通信技術)技術の発達により、幼児教育分野の需要が高まっている業界です。また、保育士の作業負担を減らす技術の開発など今までと違った視点で保育の現場にかかわることができます。
保育園の人間関係に疲れたけど子どもにかかわる仕事がしたいという方におすすめの業界です。
保育士から異業種への転職時の注意点
保育士から異業種へ転職する場合、いくつか注意点があります。
まず退社の時期はなるべく年度末にしましょう。年度の途中でやめると、運動会や発表会など大きな行事に支障が出る恐れがあるからです。
また法律上、保育園側に退職を伝えるのは退職日の2週間前となっていますが、来年度の編成などもあるため、退職の決意や転職のめどが立ったら早めに伝えましょう。遅くとも3か月前には伝えておくと安心です。就業規則に退職の申告時期が記載されている場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
円満退職したい!辞める理由の伝え方
辞めると決意しても、退職するその日までは職員として働かなければなりません。そのため、辞める理由にかかわらず、円満に退職したいものです。
結婚にともなう引っ越しや出産といった理由は、分かりやすく納得してもらいやすいため、そのまま伝えても差し支えないでしょう。
しかし、待遇面に不満がある場合、そのままの理由を伝えてしまうと、待遇の改善を条件に引き留められる可能性があります。また、人間関係が理由の場合も、そのまま伝えてしまうとさらに関係が悪化してしまいます。ネガティブな理由であっても、前向きな姿勢を見せるとよいでしょう。
- 自分のスキルを評価してくれる業種にチャレンジしたい(給料が安すぎる)
- 経験を活かして、違う視点で保育士としてキャリアアップしたい(保育園の人間関係に疲れた)
このようにポジティブな表現に言い換えることで、前向きな退職として受け止めてもらいやすく、円満に退職できる可能性が高まります。
自己分析の徹底
転職では、自己分析で自分の長所や短所、得意なことや価値観などをしっかりと理解することが大事です。特に、保育士をやめる理由がネガティブなものであれば、転職活動がその状況から抜け出す目的になっているケースが多く見受けられます。とりあえず仕事を見つけたいと転職活動をしていると、転職先でも同じ理由でつまずいてしまう可能性があるのです。
そのため、保育士からの転職を決意したその価値観を、自己分析にもしっかり反映させましょう。
また、面接では個人の印象や人柄を見るのはもちろん、自分を客観視できているかその分析力も評価されます。自分の軸や転職の方向性を見失わないためにも自己分析を徹底しておこないましょう。
履歴書の退職理由
履歴書の職歴欄に退職理由を書く必要はありません。「一身上の都合」「会社都合」「契約満了」などの定型的な文言でかまいません。
職務経歴書でも同じです。自己都合の場合、退職理由はネガティブな理由が多くマイナスな印象を与えてしまうからです。
例えば、保育士によくある「人間関係がうまくいかなかった」という退職理由をそのまま書いてしまうと「どこに行ってもうまくいかないのでは?」と思われてしまいます。「業務量が多すぎてきつかった」という理由に対しても「本人の要領が悪いのではないか?」といった印象を与えてしまうため、指示がない限り書く必要はないのです。
しかし、転職先によっては退職理由を求められることもあります。その場合、言い方を変えてネガティブな体力理由をポジティブな印象に言い換えましょう。
例文①退職理由が「人間関係がうまくいかなかった」とき
「前職では、考え方が違う人とのコミュニケーションが課題でした。しかし、その経験からチームワークやコミュニケーションの大切さを学びました。今後は、良好な人間関係を築きながら、チームの一員として積極的に貢献したいと考えています。」
過去の失敗から学び、今後にどう活かしていきたいのか、明確に伝えることが大切です。
例文②退職理由が「業務量が多すぎてきつかった」とき
「前職では、やりがいはありつつも業務量が多く苦労することもありました。効率的に作業をおこなえるようにスケジュール管理や優先順位のつけ方など積極的に改善に取り組みましたが、これ以上の労働環境が期待できず退職を決意しました。」
例文のように、業務量の多さに対しての改善など取り組んだことがあれば、あわせて伝えるとポジティブな印象を与えられるでしょう。
保育士の転職先は意外と多い!転職先を選ぶコツは「どんなキャリアを望むのか」
保育士の転職先の候補や退職時の注意点について解説してまいりました。
お伝えしてきたように保育士の転職は、別の保育園だけでなく、より専門性の高い福祉施設や医療施設も候補として挙げられます。
保育士はその業務の中でさまざまなスキルを習得しているため、保育と関係のない仕事でも経験を役立てられます。自分がどんな働き方を望んでいるのかを明確にして、今抱えている不安を解消できる転職先を選びましょう。
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神奈川県のファミリー・キッズ
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