発達障害の種類と症状とは?子どもといかに向き合うか

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「発達障害の種類別の診断基準が知りたい」
「そもそも発達障害とはどんな障害?」
「発達障害の年齢別の特徴は?」
近年、知名度の向上とともに、不十分ながらも支援体制が整いつつある発達障害。

本記事では、発達障害に関する冒頭の疑問について解説していきます。
放デイについて情報収集を行っている方、実際に申し込みを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

発達障害とはどんな障害?

そもそも発達障害とは何どんな障害なのでしょうか。
発達障害は、脳器質の先天的な変形・損壊による障害で、現在の診断では「発達神経症」と呼称されています。

とくに取り沙汰される発達障害は以下の3つです。

【発達障害】

  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • ADHD(注意欠如・多動性障害)
  • 学習障害(LD)

それぞれに特徴があるので、詳しくは後述します。
また、発達障害を語るうえで重要な以下の2点についても解説します。

【発達障害に関する要点】

  • 発達障害に併存する障害や症状
  • 発達障害のグレーゾーン

それぞれ確認してください。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム障害はASDと略される発達障害の一種です。
ASDの特性は、しばしば「独特のコミュニケーション」と「強いこだわり」と説明されます。

以下にその具体例を挙げるので、確認してください。

  • 言葉を字義通りに解釈してしまう
    • 遅刻した際に「今何時だと思っているんだ」と聞かれ、叱責していると気づかず時間を答えてしまう
    • 「少しだけ」「たくさん」「大体」などの曖昧な表現が他者と共有できない
    • 「(不幸があった人から)こんな時でも君は元気でいいね」などの皮肉に対して素直に喜ぶ
  • 聴覚より視覚優位の認知
    • 1,2秒前に言われた指示がわからない、思い出せない
    • 相手の言ったことが音としては聞こえているのに言葉として処理できない
    • 見たことのある図鑑であれば動物を聞いただけで何ページのどのあたりに掲載されているか判る
  • 決まった手順・方法しか受け付けない
    • お風呂で頭と体をいつもと逆の順番で洗うともう一方を洗い忘れる
    • ドラマ内の数秒のシーンだけを延々と観続ける
    • 家具や小物の位置を数cm単位でレイアウトする
  • 感覚過敏
    • 雑音が大きく聞こえてしまい外での会話が困難
    • 水に過剰な不快感を覚えて手が洗えない
    • 蛍光灯が過剰に眩しく感じて目を開けていられない

ADHD(注意欠如・多動性障害)

次に、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性を紹介していきましょう。
基本的には、名前の通り「注意欠如(=不注意)」と「多動性(・衝動性)」が見られます。

事例は以下の通りです。

【ADHDの事例】

  • 不注意
    • 学校へ行くのにランドセルを忘れたりパジャマのまま登校したりする
    • 人の話を聞いている最中に意識が違うところに行ってしまう
  • 多動性・衝動性
    • 手足をそわそわと動かし続ける
    • マシンガントークをしてしまう

    学習障害(LD)

    学習障害(LD)は、現在では「限局性学習症(SLD)」と呼ばれている発達障害の一種です。
    具体的には、以下のような事例が挙げられます。

【学習障害の事例】

  • 読めるが書けない(あるいは書きにくい)
  • 書けるが話せない(あるいは話しにくい)
  • 同じ算数でもほか分野の理解はできるものの、計算だけはできない(あるいは頻繁に間違える、異常に遅い)

発達障害に併存する障害や症状

発達障害は、度々ほかの発達障害の特性を含有します。
とくに、自閉症スペクトラム障害(ASD)とADHD(注意欠如・多動性障害)は併存することが多く、主障害・副障害として同時に診断されることもあります。

また「国語科や社会科は非常に得意なASD児が、算数は苦手」など、診断が下りるほどではないものの、限局性学習症(SLD)らしい特徴が見られるケースも珍しくありません。
同じ発達障害である「発達性協調運動障害」の特性が見られることもあり、左右非対称の動き(ダンス、縄跳びにおける駆け足跳び、短距離走)が不得意なこともあります。

また、発達障害が引き起こす日常生活における困難や劣等感によって、二次障害を発症しうることも確認されています。
たとえば、うつ病や双極性障害、社会不安障害などが挙げられ、治療の際には発達障害の特性も考慮した多角的治療が必要です。

発達障害のグレーゾーン

自閉症スペクトラム障害(ASD)の「スペクトラム」とは、連続体という意味です。
ASDにかかわらず、発達障害の症状は千差万別であり、その程度もさまざまです。

とはいえ、診断には一定のボーダーが必要であるのも事実であり、福祉の必要性からも一定の診断基準は決して廃止できません。
そんな現状で発達障害の特性がある程度認められるにもかかわらず、診断がつかない程度の特性を持つ人のことをを「グレーゾーン」と呼びます。

グレーゾーンの人々は、そもそも障害特性に気づくことが困難で、特有の生きづらさを抱えながら障害特性に気づかないまま生涯を終えるケースも少なくありません。
ASDに限っていえば、30〜100人に1人の割合で存在するといわれていますが、それはあくまでも診断がつく程度のものを指します。

対して、グレーゾーンに位置するASDは、文部科学省発表の数字からの推計やイギリスの心理学者トニー・アトウッド氏によると日本人の40〜50人に1人の割合とされており、日本の発達障害カウンセラー吉濱ツトム氏によれば20人に1人ともされています。
日本全体の約300万以上の人数です。

ADHD(注意欠如・多動性障害)においても、診断がつくのは40人に1人ながら、グレーゾーンであれば10人に1人はいるといわれています。

発達障害の診断・検査

ここからは、発達障害の診断・検査について解説していきます。
ここでも、以下3種類の発達障害ごとに見ていきます。

【発達障害の診断・検査】

  • 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)の診断基準
  • 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準
  • 限局性学習症/学習障害(LD)診断基準

それぞれ、診断基準と用いられる検査を解説していく前に、まずは発達障害全般にいえる3つの診断基準について解説します。

発達障害全般に共通する診断基準

発達障害全般に共通する診断基準は以下の3つです。

【発達障害全般に共通する診断基準】

  • 恒常性:どのような場面でも一定以上の特性が見られること
  • 恒久性:幼少期から特性が見られること
  • 困り感:日常生活に支障をきたしていること

これらを踏まえて、各発達障害の診断基準を見ていきましょう。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)の診断基準

ADHDでは、以下の特性が認められます。

【ADHDの特性】

  • 不注意:注意散漫、過度な忘れ物など
  • 多動性・衝動性:待つことができない、手足を頻繁に動かすなど

以上の特性の一部は誰もが持つ要素ですが、これらが「同年齢の者と比較して顕著であること」が診断を分けます。
検査には、知能検査が用いられます。

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準

自閉症スペクトラム障害は、以前は「広汎性発達障害」という名称で、その下位分類として「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」がありました。

その際、以下の3つが特性として挙げられていた過去があります。

【自閉症スペクトラム障害の過去の特性】

  • 社会的相互作用の障害:他者と目を合わせられない・対人関係の形成・維持の困難さ・情緒的相互性の欠如
  • コミュニケーションの障害:話し言葉の遅れ・会話を開始し継続することの困難
    さ・言葉を覚えるのが困難で覚えても会話がかみ合わない
  • 想像力の障害:限局された興味対象への過度な集中・習慣へのこだわり・常同行
    動(同じ遊びや行動を続けること)

今では前者2つが統合され、以下2つの特性があると定義されています。

【自閉症スペクトラム障害の現在の特性】

  • 社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的な欠陥
  • 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式

検査には、知能検査にくわえてP-Fスタディ(イラストに描かれた人らの会話を想像して答える心理検査)などが用いられます。

限局性学習症/学習障害(LD)診断基準

限局性学習症(SLD)では、以下の特性が認められます。

【限局性学習症(SLD)の特性】

  • 全般的な知的能力に遅れはなく平均的なIQを示すが、読む・聞く・話す・書く・計算するなど、ある特定の学習能力に著しい困難を示す

検査には、主に専用のスクリーニングテストが用いられます。

発達障害の原因

発達障害の原因の詳細は明確になっていません。
ただし、先天性の障害であることは判明しており、決して親の養育態度・躾が原因ではありません

ちなみに、発達障害は遺伝することが確認されており、さらなる研究が続いています。

発達障害の年齢別の特徴

発達障害が世に知られてきた頃、同時に「大人の発達障害」という言葉が作られたように、発達障害は子どもの頃から特性が見られます。

ここでは、以下4種類の年齢別に、見られやすい特性を紹介していきます。

【年齢別】

  • 乳児期(~1歳まで)の例
  • 幼児期(~6歳まで)の例
  • 就学期(小学校~中学校)の例
  • 思春期(中学~高校)の例

それぞれ解説していきますが、これらはあくまで一例です。

乳児期(~1歳まで)の例

まずは、乳児期の例を簡単に紹介します。

  • ASD:表情が乏しい、大人しいなど
  • ADHD:未発現であることが多い
  • SLD:未発現であることが多い

幼児期(~6歳まで)の例

次に、幼児期の例を簡単に紹介します。

  • ASD:同時に2つ以上される指示が処理しきれない
  • ADHD:靴の履き間違いや物の取り違えなど
  • SLD:未発現であることが多い

就学期(小学校~中学校)の例

次に、就学期の例を簡単に紹介します。

  • ASD:相手の傷つくことを悪気なく言ってしまう
  • ADHD:自分の席にじっと座っていられない
  • SLD:音読ができない

思春期(中学~高校)の例

最後に、思春期の例を簡単に紹介します。

  • ASD:過度な論理的対応により相手を怒らせてしまう
  • ADHD:課題提出が頻繁に遅れる
  • SLD:2桁の足し算が異常に遅い

関連記事:児童発達支援と放課後等デイサービスの違いは?対象・役割を比較

発達障害のあるお子さんとの関わり方

次に、発達障害のあるお子さんとの関わり方について解説していきます。
ここでも以下3種類ごとに解説しますのでそれぞれ見ていきましょう。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)のお子さんの例

ADHD当事者は、一般的に当たり前にできることとされている行為に困難を示すことから、日常生活における失敗や劣等感が多い傾向にあります。
まずは正しく特性を把握し、本人の行動特徴が甘えやわがままではないと認めてあげることが大切です。

二次障害が生じやすい発達障害でもあるため、本人の自己肯定感を保つ関わり方を心がけてください。
具体的には、本人の努力を賞賛すること、特性によってできないことを叱責しないこと、特性によって困難なことができた際に褒めることなどが挙げられます。

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さんの例

基本的姿勢として「本人にとって暮らしやすい環境で、適応力を育てつつ困難を軽減すること」を意識しましょう。

具体的には、言語ではなくイラストなど視覚で理解させること(自閉症児個別教育プログラムTEACCHより)、すべて世話するのではなく日常生活や身の回りのことはできる限り本人自身に行わせること(対人援助のひとつエンパワーメント)などが挙げられます。

限局性学習症/学習障害(LD)のお子さんの例

基本的にはADHDのお子さんとの関わりがそのまま適用できます。
「一般的に『できて当然』とされていること」ができない特性を持つため、正しい特性把握と本人を受容することが大切です。

また、限局性学習症の場合はとくに、苦手への対処よりも得意の伸長を意識した教育を重視しましょう。

発達障害に関する支援や制度について

最後に、発達障害に関する支援や制度について紹介します。
ここでは、4つのキーワードに分けて解説していきますのでそれぞれ確認してください。

療育(発達支援)

発達障害は脳の機能障害が予測されるため、障害を根底から改善することは難しいのが現実です。
薬物療法も有効とは言い難く、現状「治る」ということはありません。

そこで大切な姿勢が「療育(発達支援)」です。
「療育(発達支援)」とは、当事者にとって暮らしやすい環境をつくり、適応力を育てることで困難を軽減していく支援のことを指します。

療育は行動療法的アプローチが基本となり、適応行動を学習していきます。

合理的配慮

合理的な配慮とは、公平性や個人の権利を考慮しながら、理性的かつ適切な判断を下すことです。
差別はもちろん、逆差別(特別に良く扱うこと)も避ける接し方が重要です。

暮らしやすさにつながるトレーニング

脚がない人が走れないように、発達障害は「当たり前にできると思われていることができない」ということが多々あります。
脚のない人に無理やり走らせようとしても走れません。

発達障害は「苦手を克服」ではなく「得意を伸長」する方向に努力を推し進めましょう。
とはいえ、脚のない人も義足という工夫があるように、発達障害も工夫次第で苦手なことがある程度できるようになることがあります。

服薬療法

ADHDについては、多動や衝動性を抑えるために服薬療法が行われることも少なくありません。
しかし、服薬療法は副作用が多く慎重にならなくてはいけません。
そして何より、根本的解決ではなくあくまで「特性の抑制」であるため、デメリットが多いのも現状です。

たとえば、思考力や思考速度が落ちたと感じたり、特性のひとつである感覚過敏を音楽などの分野で活かしていた場合には、それがうまく発揮できなかったりといった事例が挙げられます。

基本的には、服薬で対処できる特性が大きなデメリットとなっている場合に、服薬療法でそれらを抑制し、並行して行動療法を用い適応行動を学習させていく関わりが一般的です。

関連記事:児童発達支援とは?サービスや費用、申請の流れを解説

発達障害の種類は主なもので3種類

発達障害は「ASD」「ADHD」「LD」がたびたび取り上げられます。
それぞれ併存する可能性は高く、その特性の発現傾向や程度は大いに個人差があります。

本記事で紹介している具体事例も、全員に当てはまるわけではありません。
発達支援サービスは、そうした個々の特性にも合わせた支援を行ってくれるので、気になる方はぜひ検討してみてください。

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